外国に行きたいな(6/3)

夕方にアイルランドのアコーディオン奏者のシャロン・シャノンのCDを聴いていると一昨年訪ねたアイルランドのドゥーランという村をを思い出す。「外国に行きたいなー」と思ってしまう。


僕が始めて外国に行ったのは30歳を超えたかどうかのあたりだった。場所はニューヨークで何と奇縁なのだけれどプラネタリウムで一緒にやっている佐藤史朗さんや田中徹クンと一緒だった。そこからも分かるように仕事がらみで簡単にいえば人の金で行ったということなのだ。この時は完璧に駄目だった。何が駄目だったかといえば自分で何も出来ないという事なのだ。初めての外国に圧倒されてしまってパンとコーヒーが買えただけで喜んでいたようなもんだった。


その一年半後に僕は意を決して2ヶ月間一人でロンドンに行った。コネも宿の予約も無し。往復のチケットのみ。目的はなし。強いて言えば一人で外国に行ってみたかったという程度のものだった。結果的にはニューヨークの時と大差なかったのかもしれなかったけど、一人だし自前の旅行だから気は楽だった。向こうの現地の奴らと結構仲良くなる事が出来たし。僕は筆不精なので交流は途絶えてしまったけれど、二月の間安ホテルの部屋をシェアリングしてたニールとかグラム、ホテルのマネージャーのパトリックとか今どうしてんのかな。時々思い出してるよ。あんたらの事も。三度目の海外旅行だった一昨年のアイルランドの帰りにヒースロウでの乗り継ぎだったのでロンドン市街の上空を飛んだのだけど天気が良くてハイドパークやロイヤルアルバートホールなども見えて懐かしかった。


なんでドゥーランの景色を思い出すのかといえば、この村にはパブが三軒しかないのだ。夕方になると何とはなしに人が集まってきてギネスを呑みだすのだ。外には牧草地らしきあまり豊そうではない土地がうねうねと続いている。何故か夕方になると一匹の牛が岩の上に立っている。ムール貝をガーリック味で茹でた料理がまたギネスにあうのだ。「×××××××ガハハハ・・・」とりあえず連中は良く喋ってる。パブのオネーさんが各テーブルを回って注文を取ったり空いたグラスを下げたりしている。アイルランドのパブでは一口分でも残っているグラスを店員が勝手に下げたりすることはない。これはマナーなのだ。いいマナーだよね。
そのうち何とはなしに一人二人とミュージシャンたちが集まってくるのだ。さっきまでトラクターを運転していたのかもしれないが彼らは立派なミュージシャンなのだ。まず自前でギネスを注文してミュージシャン優先席に座る。一応あるのね優先席が。演奏が始まるまでは誰が座っていても良いのだけど一応来たら譲ってあげてね、程度のもんだけど。何となくちょっと詰めたりして席を作って、さあ演奏始まるのかと思えば集まってきたミュージシャンも「×××××××ガハハハ・・・」「△△△△△△△どはははは・・・」的な感じでギネスを呑みながら喋っている。僕は英語が分からないのだけどきっと「いやー羊が逃げちゃってさー大変だったズら」なんて言っているのかもしれない。お喋りも飽きてやっと演奏が始まるかと思いきや今度は演奏する曲の打ち合わせが始まるのだ。「お前あの曲知ってっかー」とか言ってフレーズを教えあってたりする。しばらくやって「やっぱ駄目だはー」的に突然終わったりする。そんな風にしているうちに楽器を手にした色々なミュージシャンが集まってきて演奏も熱が入ってくる。生活と伴にある音楽ってこういうものなんだな。特に何日目かの夜に片足のない初老の男性が唄った曲は良かったな。その頃になるともうフードのサービスはなくなりドリンクだけになる。もう一杯ギネスを呑もうかな。


ああ外国に行きたい。



ギネース呑みたーい 人生を考える牛
こんな感じの景色 演奏は続くよ何時までも