ノーサイド(3/12)

久々に良い光景を見たと思いました。ちょっと前になってしまいましたが、先月の26日秩父宮ラグビー場で行われたラグビー日本選手権決勝、東芝府中とNECの試合のことです。
当日は生憎の雨模様だったのですが、現在の日本ラグビーシーンにおいて間違いなく「二強」であるこのチームの激突は大変見ごたえがありました。
雨でハンドリングがやや難しい事からやや東芝に不利な部分もありましたが「攻めの東芝」「守りのNEC」という持ち味を両チームとも存分に発揮していました。


両チームともとても好きなチームですが、いつも感心してしまうのはNECというチームの戦略を更に昇華させた精神性です。それは「相手の一番の持ち味を真っ向から粉砕していく」という事です。2003年の決勝でもサントリーの高速ラグビーを粉砕した事について以前コラムでも書きましたが、今年も東芝のスタンディングラグビーをとにかくタックルで倒す事を徹底して80分間続けていました。自分たちの一番自信のある事に、怯むことなく向かってこられるという事がスポーツにおいて大変なプレッシャーになるという事をこのチームは徹底して戦術化しているように思えます。
6対6で迎えた70分過ぎからの東芝の攻撃は、NECの選手がシンビンという10分間の退場を命じられて一人少ない中での守りだったので「おそらく東芝の逆転トライが決まるのでは」と思いながら見ていました。
雨の為にバックスに展開する攻撃ではなくドライビングモールを使って攻めた東芝の攻撃は確実にNECのゴールラインに近づきあと一歩でトライというシーンが何度かありました。その度にギリギリのところで押し返すNECの守りは見ていて体をよじりたくなるような際どさでありしぶとさでした。特にラストプレーはトライと思ってしまいましたがリプレイをよく見てみるとジャッジの通りのノックオンでした。


ゲームが終わり30秒前まで体から湯気を出しながら肉弾相打つ熾烈な攻防をしていた東芝とNECの選手が抱き合ってお互いの健闘を讃えあっていました。僕にはどの選手の表情にも一点の曇りもないように感じられました。自分の出せるものは全て出した、そしてゲームは終わった、これだけのゲームをやらしてくれた相手を讃えよう。もう敵も味方もないつまり「ノーサイド」。この言葉の意味を一番実感できた試合でした。