梅里雪山(5/4)

プラネタリウムのレコーディングが終わった後ボーっとしていました。ボーっとしているうちに加藤いづみさんのツアーのリハが始まって、気がついたらツアーが始まっていました。ホントに何をやっているのやら。ツアーの事に関しては加藤さんのブログにも書いているので是非そちらを読んでみてください。


という訳で、今日はそのボーっとしている期間に読んだ「梅里雪山」という本について書きたいと思います。


うちの近くに「モンベル」という大きなアウトドアショップがあります。そこには小さいながらもギャラリーがあり定期的に写真展などをやっています。先日、買い物のついでに立ち寄った時に「梅里雪山」というタイトルの写真展をやっていました。入り口にあるパネルを読んでみると、これらの写真は著者の小林尚礼さんが1991年に遭難した大学山岳部の先輩たちの遺体を捜索する中で撮り溜めたものだという事が書かれていました。またその活動を経て小林さんは会社を辞めてフリーのカメラマンに転身したという事も書かれていました。中に入って写真を見ていくと雄大な山の写真に混じって氷河から発見された遭難者の遺体を現地の人が運んでいる写真もあり、その下には「村人たちは聖山に登ろうとして死んだ者に決して触れようとしなかった」と書かれていました。その横には山麓にある村の色彩豊で穏やかな日常生活を撮った写真も飾られていました。この写真を撮った人は山だけではなく「生活」や「人」について撮ろうとしているのだろうと強く感じ、その姿勢にとても好感を持ちました。そして出口にあった「梅里雪山」という本を手にとってレジに向かったという経緯でした。


梅里雪山(メイリーシュエシャン)というのは中国南部、ミャンマーとの国境近くにある山です。最高峰は現地で「カワカブ」と呼ばれている未踏峰の6740メートルの山です。この本は1991年に起きた著者の先輩及び中国人隊員17名を巻き込んだ大量遭難の記述から始まります。そして5年後著者は先輩たちの遺志を継ぎ登頂を試みますがやはり失敗してしまいます。そして遭難から7年後の1998年に氷河の下流から決して発見されないだろうと言われていた遭難者の遺体が発見されたという連絡が中国より入ってきます。会社を休職に近い形でこの遺体捜索に参加した著者は現地の村民と交流していく中で何故現地の人が登山隊に対して冷ややかで非協力的だったのかを徐々に理解し同時にその村に魅かれていきます。そして帰国後会社を辞めフリーのカメラマンになる決心をします。


その後何度も遺体捜索に参加するためにこの村を訪ねた著者はこの山が人々によって「聖山」として崇められていた事を深く知り、親しくなった村人と伴に山を巡る巡礼の旅に出ます。登山隊が行ってきた登頂を目指すという行為が村民たちの信仰をある意味で土足で踏みつけるような事だったと思うようになります。そして様々な角度からこの山を見る事でいかに村人がこの山を大切にしてきているのかを強く感じ、登頂だけを目指していた時は決して目に入らなかった山懐の恵みによって大勢の人々の生活が支えられ、心が癒され続けてきた事を知っていきます。こんなくだりがあります。
「目の前の17人の骨を拾いながら、聖山とはなにかを知るためのかけらを集めてきた。そんな聖山のかけらを集めるうちに、カワカブによって傷つけられたものが、カワカブによって癒されていったように思う」。


文化の違いについて考える事が僕もあります。この本を読んで文化というのは生活の拠り所なのではないかと再確認しました。もちろん世界中には色々な文化があるわけですが、それを一方的な形で、ましてや力を伴った形で否定されるとそこにはとても強い「負」のエネルギーが生じるのだと思います。過去から現在まで世界的に起きている人同士の争いの悲劇は殆どこれが原因で起きているように思えます。しかし、その文化の違いを乗り越えてでも交流できる事が人の本当の素晴らしさなのだという事もこの本を読んで気づかされました。
そして、また自分とは違った文化を受け入れる事によって、今まで自分では見えなかったものが見えてくるという事もとても刺激になり、人との意思の疎通に大きな悩みを抱えている僕にとっては大きな励ましになりました。


数日後モンベルの写真展に著者の小林尚礼さんが来ていたので直接お話しする事ができました。5月にまた梅里雪山に行くとの事だったので「本の中にも書かれていましたが、登頂は今のところ考えてないのですか?」と質問すると「ええ。本を書いた時点でも今でもそう思っています。ただ現地に住んでいる人が登るようになったらば、是非一緒に登ってみたいと思っています」と仰ってました。本の裏表紙にサインをもらって「元気に気をつけて行ってきて下さいと」と言い握手をして別れました。
興味のある方は是非小林さんのサイトにもアクセスしてみて下さい。http://www.k2.dion.ne.jp/~bako/index.html