秋の空(10/29)

夕日でオレンジ色に染まったいわし雲があまりにも美しかったので、練習の手を休めて庭のブロックに座り空を眺めていました。鮮やかだったオレンジ色が時間が経つにつれて薄いピンク色になっていきます。夜というのは、少しずつ、本当に少しずつ足音を消しながら忍び寄ってくるものです。
でも、僕は秋のこんな時間帯が大好きです。部屋の明かりが温もりを持って迎えてくれて、その奥では夕食の支度が始まっている。きっと子供の頃のそんな風景を思い出すのでしょう。
空を見上げると、いわし雲の縁を大型旅客機が飛んでいるのが小さく見えました。大阪に行くのか、博多に行くのか、別の街か。いずれにしても出張や用事を終えて我が家に向かう人も乗っているはずです。何千メートルの上空から暮れゆく景色を見ながら、家族の事、自宅に戻って食べる夕食の事を考えていたりするのかもしれません。


庭に座ってボンヤリをそんな事を思っていたのは、先週から昨日までに「生きる」という事を深く考えさせられる本と映画に触れたからです。本は飯島夏樹氏が書いた「ガンに生かされて」と「天国で君に逢えたら」です。映画はイザベル・コイシェ監督、サラ・ポリー主演の「あなたになら言える秘密のこと」です。


飯島夏樹氏は元プロウィンドサーファーで引退後マリンスポーツ会社を経営していましたが、完治の難しい肝臓ガンを患い余命宣告を受けます。その病床で小説を書くことに生き甲斐を見出し、書き上げたのが「天国で君に逢えたら」です。そして、いよいよ病状が悪化していく中での毎日をエッセイとしてまとめたのが「ガンに生かされて」です。このエッセイは飯島氏が亡くなる5日前まで綴られています。僕は書店でこの「ガンに生かされて」を手に取り、それを読んだあとに処女作「天国で君に逢えたら」を読みました。
死に対する恐怖を乗り越え、今生きていることに喜びを感じる、飯島氏はきっとそのような胸中に達したのではないかと思います。文章から伝わってくる、ポジティブな前向きなエネルギーは僕にそう感じさせてくれるのです。
彼はエッセイの中で、自分にとって本当に大事なことを分からせてくれた、病気にも感謝しています。病気になったからこそ、知ることが出来たと。
俗世にまみれて生きていると、自分にとって何が大事なのかを見失ってしまう事はよくあるのだと思います。欲やプライドをそぎ落としていって、最後の最後に残る自分にとって本当に大事なもの、もう一度考えても良いのではないかと思いました。


「あなたになら言える秘密のこと」。以前に映画のコラムでも書いた、「死ぬまでにしたい10のこと」を作ったキャスト・スタッフが再び作った映画です。
これは昨夜見たばかりでまだ何とも書けないのですが是非、見て頂ければと思います。
何かあえて感想を書くとすれば、人というのは深く傷を負った相手の心を癒すことも出来るのに、片方では絶望の淵に落としてしまうような傷をいとも簡単に与えてしまう。一体人というのは何なのだろう?そんな感じです。


いわし雲を見ながら思いました。今自分は問題は色々と抱えていますが、とても幸せなんだと。