食べず嫌い (6/16)

子供の頃は本当に食べ物に関して食べず嫌いが多かった。肉も挽肉じゃないとダメだったし野菜はナス・ピーマン・にんじん・玉ねぎ・に始まりほうれん草・アスパラ等々。魚は刺身は殆ど全滅で貝類もダメ。今思うと一体毎日何を食べていたのだろうかと思う。それはたいした変化もなく高校卒業後も続いていた。
その食べず嫌いに劇的な変化が現れたのは19のころだった。その頃僕は音楽の世界に少し足をつっこみかけていてよくある話しなのだがお金がなかった。それを見ていたその当時大変お世話になっていた方が僕の誕生日にたまには寿司でもご馳走してやろう、と言って下さった。寿司というのは玉子くらいしか食べられなかったのだがやはり目上の人にご馳走してもらうとなると「あれは食べられません。これも食べられません」という訳にはいかなかった。
僕はそれまで殆ど食べたことのなかったイカのにぎりを思い切って食べてみた。今でもその時のことを感覚的にすごくよく憶えている。不思議な感じだった。何故かと言うと美味かったのだ。同時に僕の心の中に「ひょっとすると」という気持ちが芽生えてきて、やはり殆ど食べたことのなかったタコを注文して食べてみた。美味かった。あの時ほど本当に「損してたな〜」と思ったことはないかもしれない。それ以来僕の食べず嫌いはなくなった。その後ツアーなどに行くようになって地方でそれまで食べた事のない物を出して頂いた時に、苦手そうな物でも必ず一口は食べるようになった。
今思えばそれ位の年頃は子供の味覚から大人の味覚に変わる時期だったのかもしれないと思う。でもあの時強く思った「これからは食べないで決めるのは止めよう」という思いは今でも強く残っている。