「戦場のピアニスト」

さて何を書いたら良いのか考え込んでいます。
ストーリーは第二次世界大戦時、ポーランドのワルシャワに住むユダヤ人ピアニストがナチの迫害を逃れて奇跡的に生き延びたという物語です。これは実在のウワディスワフ・シュビルマンというピアニストが書いた本を原作とした実話なのです。感想とかを書く気になれないのは、あまりにも重い歴史的事実と、あまりにも大きい人間の課題というものを突きつけられてしまったからです。
人が無意味に殺しあう戦争というものが何故繰り返されてしまうのか?という疑問をこの映画を見て改めて考えざるを得ません。この映画は50年前の話であっても同様の話は絶えた事がなく、また新たに始まるかもしれないというのが、まさに今日この頃なわけです。いったん戦争が始まれば個人なんてものは行き場がなく、単に生き延びるのか死ぬしかしかないという状況に追い込まれるわけです。僕はシュビルマンが生き延びられたのはピアニストだったからではなく単なる偶然だったのではないか、むしろその自分ではどうする事も出来ない戦争における生死の偶然性こそ描きたかったのではないか、とも思ってしまいました。
それともう一つ、これはワルシャワという色々な軍事的大国に弄ばれてしまった街を描きたかった映画なのではないかとも思いました。それはワルシャワ蜂起の後にピアニストが塀を乗り越えて廃墟と化した街並みを見るシーンにも現れていました。
「どう表現したら良いか分からない映画」というのの中に入る一本である事は間違いなさそうです。ただ一つ違う意味で、この映画において主人公を含めたポーランドの人たちが何故英語を喋っているのか、何故そうなってしまったのか(しなければならなかったのか)ということにも凄く大きな危うさを憶えるのですが。