「めぐりあう時間たち」

この映画は微妙な糸で繋がっていはいるものの時間も場所も離れた三人の女性のある一日を切り取った映画です。神経を病んでいるために夫と共に田舎で療養生活を強いられている事に、夫に対して感謝を抱きつつも何か満ち足りないものを感じている女性作家。一見「こんなに幸せな状況にありながら」と思えるのに内面においては激しい葛藤をもっている主婦。かつて恋人とも呼べる存在だったエイズに冒されてしまった詩人の友人を励まそうとする雑誌編集者の女性。そのストーリーは、解り易く言えば「幸せとは何なの?」ということに尽きるのだと思います。誰の為に生きているのか?そして自分らしく生きていく事とは?といった問いかけを投げかけながら、その女性作家の書く小説「ダロウエィ夫人」に操られるように映画は進んでいきます。


一言で言ってけっこう辛い部分もありました。それはつまらないという意味ではなく「分かるな」という気持ちだったり、自分のすぐ近くにもそういう事があるということなのだと思います。「身につまされる」という事なのでしょうね。映画の出来はとても素晴らしかったと思います。久々に文学的(ちょっと陳腐な表現ですがお許しを)な映画を見たという感じがします。ニコール・キッドマンはこの映画でアカデミー最優秀主演女優賞を受賞したわけですが、僕はメリル・ストリープが一番良かったです。なんか雰囲気は颯爽としているのだけど内側にもろさがあるという女性を演じるとこの人は本当に光ります。あとエイズに冒されてしまった詩人を演じているエド・ハリスも好きな俳優の一人です。この二人の会話というのはかなり辛らつなものが多かったのですが生意気言っちゃうと素晴らしい演技でした。
今すぐというのではないのですが少し時間をおいてもう一回見てみたいと思った映画でした。