狩人と犬 最後の旅」

やはりフランス映画というのはアメリカ映画と全然違うのだなぁと思いました。


この映画はフランスの写真家であり冒険家でもある、ニコラス・ヴァニエが実際北極圏横断中に出会ったノーマン・ウィンターという猟師を題材にして描いたものです。ノーマン本人が出演しています。
ロッキー山脈で50年近く猟師として暮らしているノーマンは、森林伐採などで年々動物の数が減ってきたのを理由に今年限りで猟師をやめようと思っています。そんな折にノーマンのもとに一匹のハスキーの子犬アパッシュがやって来ます。
初めのうちノーマンはアパッシュにダメ犬の烙印を押していたのですが、氷の湖に落ちたところをアパッシュに救われた事をきっかけに絆を深めています。


ストーリーは大きく言えばこのようなものです。ストーリーよりも実際にロッキーで犬とともに暮らすノーマンを追い続ける事で、自然の中で生きる事の哲学のようなものを描きたかったのではないかと思います。
毛皮を街に売りに行った時に酒場でノーマンはこう話します。
「死とは何か分かるか?」
「死とは命を受け渡していく事だ」
「死によって他の動物の糧となる」
「俺も動物だ」


映画の最後でアパッシュはリーダー犬のウォークとの間に子供を儲けます。その子犬が遊んでいる姿を見ながらノーマンの妻ネブラスカは尋ねます。「今年でやめるのに、何故立派な小屋を建てたの?」「さあな」ノーマンはカヌーにのり再び旅立っていきます。
彼は猟師を辞めたのか?辞めなかったのか?どこに旅立って行ったのか?先ほどの酒場のシーンでノーマンが
「春になって姿を表さなかったら、妻と犬たちを頼む」と語っていた事がそこに繋がっているのか、どうか?
ニコラス・ヴァニエ監督はこのシーンを「彼は自然の中に溶け込んでいくのだ」と語っています。謎めいた終わり方です。今だに僕の中でも反芻を繰り返しています。


結論を見ている側にドサッと放り投げてしまう感じが、アメリカ映画では無いよなーと思った次第です。ロッキーの四季の映像、犬ぞりのシーンなどを含めとても迫力があり美しく、見る価値有りです。